ザベリーベストオブ2016年の卯野
ザベリーといいつつ複数あるベスト。
そもそも大してブログを書いていない。
ベストオブ読んだ本
「アンドロイドは電気羊の夢をみるか?」も面白かったんだけど、「こんなのありかよ!」のチート感も含めインパクトが強かったのがこちら、ピエール・ルメートル「悲しみのイレーヌ」。
今シリーズ最終作「傷だらけのカミーユ」も読んでるけどのっけから非道い。ルメートル先生は女性に何か恨みでもあるんですかね…。
ベストオブ寿司
余談だけども「鮨」ということばは魚へんがあるので魚がのっているスシにしか使えないそうだ。
この酢飯屋さんはじめ他の魚以外、たとえば牛肉などの食材をネタにするスシの場合は「寿司」の字をあてるとか。
酢飯屋さんへはぜったいにまた行く。
ベストオブ短歌
子燕が去ったパン屋の軒先はいつもより濃いこむぎのにおい
・次点
なに者も午睡の神を宿らせて春の電車は泥田をゆく
川ぞいの柳の街をぶらつけば怖くてにげた自由のにおい
水蓄わうことを忘れたかどの田に胸いっぱいのなのはななのはな
日曜の青さを汚す無粋さをだれかに詫びつつぞうきんを干す
子どもらは光いっぱい泳ぎます青海紋をこわして編んで
ほろ酔いで見あげた星の冷たさがあした消えても忘れてしまう
「ひとりでも平気だよね」ってった人よ今もおでん汁かけたくなるよ
雪白く星の先まで遠吠える今夜二匹の狐となって
恋だとか友情よりもうつくしい解をプールの底にさがしに
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じっさいに自分が目にした風景を歌にした、「写生としての短歌」のほうが愛おしく、記憶にも強く残っている。表現技術のいたらなさもあり、他の人と共有はしにくいんだろうけど。
パン屋の短歌は、言ってることはそんなに大したことではないんだけど、自分の観た感じたものを「これがベストだ!」と思える31文字にストンと出力できたので、ほんとうに嬉しかった。
「なに者も午睡の神を宿らせて春の電車は泥田をゆく」は今年前半まったく短歌が詠めなくて(読んでも詠んでもいいと思えなくて)、あーワイは短歌不能になってしまったのかとなかば諦めていたところにポっと詠めた歌だったので思い入れが強い。
2017年にやりたいことは明日以降ゆっくり考えよう。
今年は雪が少なくていい。おだやかな年の瀬を。
タイトルはユニコーンのベストアルバムから拝借。
惑星おでん−短歌の目12月
さ、参加しまーす。
題詠5首「惑星おでん」
1. おでん
火星でもおでんとビールがあればいいよくわからない足が煮えてる
2. 自由
平日の光のどけき銭湯でゆびをふやかすくらいの自由
3. 忘
忘れない光年先の凍光をいまはもうない星のあなたを
4. 指切り
「死ぬ前にあけて」と指切りしたままの小指できみはコールド・スリープ
5. 神
神よ神よ、あなたが忘れたこの星でふたりぼっちの神さまになる
テーマ詠「冬休み」
夜を越せば大人になれるはずなのに気づけばだいたいサブちゃんである
初詣神社へつづく提灯路 夜のおとなはなんだかこわい
冬晴れの軒先下のつららにはいっぽんいっぽん朝日が宿る
小指ほどのつらら含んで走り出す太陽の味はつめたくあまい
空を切り細氷を切りそりはゆくまつげの奥の正しい速度
てのひらの六花がまるく融けていく大人になっても見えていますか