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nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

オカマバーの鰐子さんに恋愛相談をもちかけられた話

日記

オカマバーで少し複雑な恋愛のカタチについて相談されたことを思い出したので、その話を。



http://www.flickr.com/photos/62758442@N03/5713714538
photo by socialspice.de


ちょうど盆終わりくらいの夏だったな。
私の友人の歯科衛生士専門学校生とその彼氏、そしてその友人(♂)で居酒屋で飲んでのち「先日楽しいオカマバーを見つけたから行こう」という話になり、飲み屋街の中心から少し外れたファッションビルの2階にある「ロレアル」というお店へ。

私も友人もオカマバーは初体験だった。「はいカンパーイ♡あんたたち女は後よ、後あと!ここはそういう世界だから覚えときなさいよ」と男性女性で猫なで声とダミ声を瞬時に使い分けるオカマたちの接客にたいそう楽しくもてなされていた。

そのうちに私たちについてくれていたホステスのうちの一人「鰐子」さんという人と「彼氏いるの?」という話になった。
顔がワニみたいだから、というのが源氏名の由来だそうだ。
綾野剛をマチルダボブにカットして急激に180cmにのばした結果、不自然にでっぱってしまったような関節の節々。その薄い木板に雑にかけたようなスリップドレス。
薄いくちびるに真っ赤なルージュを引いていたのが、裂けたみたいだった。

ちょうどその頃私は横浜で鬱病を煩っていた彼氏に別れを切り出されたばかりだった。連絡がとれないと思っていたら躁状態に陥っていたらしく、黒土三男監督『英二』を観てのち長渕剛とVシネにすっかり傾倒してしまい、宝塚音楽学校を辞めた女と二股をかけ「こいつは俺が守ってやらなあかんねん。お前はひとりでも生きられる」と言われたばかりです、と鰐子さんに返答した。

するとおもむろに鰐子さんはポーチの中から携帯を取り出し、私に待ち受け画面を見せながらこんな話を始めた。

「アタシね、つきあってもうすぐ半年になる彼がいるの。でも彼はゲイで、彼もアタシのことゲイだと思ってるの。
彼と逢うときは格好も中身も男のフリをする。でもアタシは本当は、女として彼と接したい、女として彼に抱いてほしいのよ。どうすればいいと思う?」

待ち受け画面で一緒に写ってる鰐子さんの彼氏さんは鰐子さんより頭ひとつ小さくて、ジャニーズみたいなかわいらしい顔つき。そのジャニーズの横に絶妙な距離感で写っている男の格好をした鰐子さんはキリっとしてミュージシャンのアルバムジャケットみたいだった。どっちもイケメンだけど写真で見るかぎりどうみても鰐子さんが男役。ぜんぜん脳内処理できない。


「いやあ私鰐子さんに何か言えるほど経験ないっすけど、やっぱカミングアウトしかないんじゃないっすか」
「そうね、やっぱそうよね。でも半年よ、半年彼をだましてたのよ、どんな顔して言えばいいのよ。彼のこと大事なのよ。彼を傷つけたくないの。」


そう少し眉をひそめて憂うその横顔をみながら、あ、この人、赤いルージュを落としたほうがきっと綺麗、と思った。
たぶん本人だってわかってる。
自分を隠して彼に逢いつづける鰐子さんだってもうとっくに傷ついてる。


後から知ったことだけど、こういった話はトランスジェンダートランスセクシュアル付近の人には起こりうる話のようで、
ゲイとして同性を愛したい、
トランスジェンダー(セクシャル)として異性を愛したい、
トランスジェンダー(セクシャル)として同性を愛したい、とか、
どっちもいける、とかとか。

ふつうにヘテロの男女の恋愛でも隠し事の1つや2つあるもので、それでも大概はそのままなんとか進んでいけるものだけど、彼女たちにはスタートの時点からこんなに繊細なのかあ、と思った。
鰐子さんも鰐子さんの彼氏も悪くない。悪くないのにせつない。
この現象を代替する単語や熟語やカテゴリ名ってあるんだろうか。きっとそういうものに定義しきれない細かな機微が、物語としてずっと心に残るのかもしれない。

それから1年後その店の前を通ったけれども、かつて「ロレアル」であった看板は別のスナックの名前になっていた。
鰐子さんのお幸せを祈る。

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