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nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

文章スケッチの広場「駅」

客観的な情景描写にトライする「文章スケッチの広場」。
主観と客観の区別のとてもよい練習になっています。
ぜろすけさん運営多謝でございます。

novelcluster.hatenablog.jp


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 田んぼを分断する道路を車で抜けた右手側にその駅はある。
1階建ての、横に広い駅舎だ。トタン屋根に縫ってあるエメラルドグリーンのペンキはところどころ剥げている。駅名を記した看板のフォントもかすれている。駅舎を囲むようにして生えている木々からはミンミン蝉の声がきこえる。
 駅舎の中に入ると、外の日差しからは幾分か逃れられる。入り口を入って左手に券売機、その奥に駅員の座る窓口がある。ガラスの窓口ごしに見える駅員は眼鏡をかけている。うちわで開襟シャツの首元にゆっくりと風を送りながら、デスクの上に置いてあるペーパーに目をやっている。

 駅舎内部の右手には待合いスペースがある。下は鼠色のコンクリートで、壁四方にはJRでの観光を促すポスターが数種類貼っている。ポスターのなかでは、現実のこの地域ではあまりみかけない類の女性が笑顔をつくっている。
待合室の中央に三連ベンチが整然と4つ並んでいる。ベンチはポリエチレン製のすわり心地が固いもので、オレンジ、白、ペールブルーの色が交互に並んでいる。一昔前に流行った、ミッドセンチュリーデザイン、を模したもの、といえば、聞こえはいいだろう。
 
かつてその待合室内にはキオスクもあったが、10年ほど前にはなくなっている。改札口の機械化はまだなされておらず、いまだ切符を駅員に提示、降りるときは手渡しするスタイルだ。
 踏切がなる。アナウンスが流れる。ゆっくりと駅員が改札口に立つ。切符を手渡して改札口を抜け、1番ホームに立つ。ふたたび熱気がからだにまとわりつく。自分の他にこの駅からこの時間に乗り込む客はみあたらない。陽炎のむこうから、緑の中を抜けアイボリーに紺のラインが入った電車がゆっくりと近づいてくる。

(空白含め715字)


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振り返り

屋根やベンチなど、日常目にしているものなのに、いざ描写しようとすると意外と素材の名前が出てこないことに気づく。
実際にベンチの素材がポリエチレン製なのかポリカーボネイト製なのかそれとも他の素材なのかは不明瞭だけど、駅員さんに聞いてみるのも不審かなあ。でも「固くてツルツルした」というよりかは「ポリ製の」と固有名詞を出したほうが風景に重力が感じられるというか、読み手はくっきりと情景を想起しやすいですよね。
「書く」というのは能動的に世界を「知る」ということなのだなあ、と、書くたび飽きずに感じます。

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