nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

第11回短編小説の集いのべらっくす感想・前半でっす

http://novelcluster.hatenablog.jp/entry/2015/08/27/113924novelcluster.hatenablog.jp


今回お久しぶりに「短編小説の集いのべらっくす」参加し、参加者のみなさんの作品も読むことができました。運営の虚無透さん、取りまとめおつかれさまでした。感想ありがとうございます。


というわけでざくっと感想です。


sakuramizuki20.hatenablog.com


後半8割くらい過ぎて唐突に「レイ」「天狗」という名前が出てきたので正直とまどいました。同学年の男子よりはどこか大人めいている女の子、それは天狗を知っている(恋仲?)という秘密があるから、ということは伝わったので、せめて中盤くらいからレイの存在、それもただの人間ではなく、ちょっと読者に「?」と興味をもたせるような含みがあればよかったのかな、と思いました。



isseihaduki.hatenablog.com


話の流れがわかりやすく、オチまできれいにまとまっているなと思いました。やさしい物語ですね、読みやすかったです。惜しむらくはセリフなどが説明気味になっているところかな?ここらへんとか気になりました。

(小学校中学年ぐらいかな?)

「こんなところに池があったんだ…どうして僕をここへ連れてきたの?」

あまりにも退屈すぎて、妄想でもしていたのだろうか。

baumkuchen.hatenablog.jp


かなわなかったジュブナイルの恋。地元の祭りとりんご飴は俊哉にとって倫子そのもので、その思い出はたとえ婚約者だとしても不可侵なんですね。「恋は名前をつけて別フォルダで保存」の男子(男性、ではない)の恋だなー、と思います。
小4から中2までの倫子と俊哉のクロニクルが美しい。正直まっすぐ過ぎて自分には書けない(ぜったい登場人物一人くらい殺したくなる)。そして大人になってから俊哉がひとりで祭りを訪れて、ポニーテールのままの倫子と偶然再会、は決してしないところ、そんなファンタジーで終わらず現実の時間の流れから大人として「あの日」を振り返るところがほろにがビターなねぎさん節なんだろうと思います。



yutoma233.hatenablog.com


前回の作品を読んだときも思ったけど、小野さんは本当に楽しいお話が好きなんだなあと思いました。本筋はかっちりと存在するなかで、カナエと直樹以外の登場人物や脇道のエピソードもいきいきとしてますよね。ここらへんなんて、続編、スピンオフみたいな感じでカナエと弟とのやりとりも見たいなあと思いました。

本当は三本目の足めがけて前蹴りをお見舞いしてやりたかったのだけれど、昔弟に「彼氏が出来たら前蹴りだけは止めて差し上げろよ…?」と内股で妙な忠告を貰った事を思い出しぐっと我慢した。

たぶん小野さんの中では登場人物やどういう方向に話がすすむのか、ということが全部見えているんだと思いますが、読む側としては冒頭でカナエの他の登場人物名が涼香、柚希、山田と杉本と多く、人物描写が少ないので、どの人物がストーリーのキーになるんだろう、と思って必死に覚えるくせのある自分はちょっと混乱してしまいました。短編という字数制限とカナエと直樹のストーリーが中心のお話であれば、前半の友人とのやりとりはおもいきって情報量を少なくしてもいいかもしれないな、と感じました。


literary-ace.hatenablog.jp


添嶋さんは初回の「ライカ・ケイム・バック」から感じてたんですけど、とくだん難しい技巧や修辞をお使いになるわけではなく、プロットもかなり奇抜なものではないけれど、どれも安心して読める印象です。書く基礎技術がしっかりしていらっしゃるのと、「添嶋フィルター」みたいな、視点の優しさからなんだろうな、と思います。今回もよくよく読み返したら描写に無駄がなくって、ちゃんとヤマウチの心理とリンクしているんですよね。お手本にしたいです。

ヤマウチがヤマナカから分化して、別のだれか(ハシモト)のことを考えられるようになって、ほんのすこし成長するお話なんだな、と読みました。

握られた右手が熱い。

迫ってくる神輿から逃げるように何度も後ろに下がる。
つながった手が離れる。
祭りの装束の人たちがわああ、とも、うおお、ともつかない声を上げて流れ込んできた。少しずつその場から動いて、社務所の近くに逃げたヤマウチはヤマナカを探す。

自他の未分化な友情から、他者がいる世界へ。
ヤマウチくんの一歩をいっしょに見たような気持ちでした。

ところで余談ですが、

「なに、そんなに気になる?」
ヤマナカはカキ氷をしゃくしゃくやりながら、ヤマウチが自分の格好の不慣れさにもぞもぞしているのを見ていた。
「初めて着たからなんかちょっと変」
「みんな似たようなカッコしてるんだからいいじゃん。こんだけ人がいたら誰も気づかねえよ」


ここだけ抜き出したらつきあいはじめてのカップルで、しかもヤマナカの無意識でやってるイケメンっぷりが目に浮かぶようです。そりゃ男子も女子も惹かれるわ。




zuisho.hatenadiary.jp


なぜか祭りおじさんはひょっとこのお面をつけているにもかかわらず「産ませてよ!」でおなじみごっつええの半魚人のかぶりものをした松っちゃんで脳内再生されたんですけどそれはまあ横に置いといて、祭りおじさんが「祭りおじさん」であることにしがみつきたかった哀愁と、それ以上に、おじさんがそれを真面目に語ってんのにぜんぜん話を聞いてない浩介とのディスコミュニケーションっぷりが残酷すぎて笑っていいのか複雑な気分でした。アンジャッシュとかラーメンズの芝居みたいな感じ?なのか?

で、この絶望的なディスコミュニケーションのまま終わるのかな、と思いきや、最後の最後で並走してたおじさんと浩介、両者の物語が急にバチコーンと符合して「ああなるほど、巧い」と唸りました。優しい。

さいしょ、この物語は浩介の歳相応な女子へ想いが父母の離婚のせいでブレーキかかってしまい、そのブレーキを祭りおじさんが解く、という構造なのかな、と思ったのです。だとしたら冒頭3つのキーが出るうち祭りおじさんと父母の描写のインパクトが強すぎて、残りの少女のキーがちょっと弱いんじゃないかと。
ズイショさんにtwitterでお聞きしたところ「それとは逆で、浩介が女子との出逢いを媒介にして自分の環境を考えているところ」だとおっしゃってたので、なるほどそれなら(中学生としては相当変わってるんじゃないかなと思うけど)、納得です。



lfk.hatenablog.com



文字通りネットの”祭り”ですね。
L時事ネタを素早く落とし込んだのと、会話だけのやりとりが独特で「巧いな」と思いました。スピード感があって「これどうやってオチをつけるのか」が読めなくて面白かったです。本当に某掲示板で祭りをヲチしてる感じだったな。
ただ私がせっかちなのか、もう少し匿名たちに役割振り分けて話をすすめたらもっと文字数がコンパクトになるんじゃないかと想いました。
ミステリ作るハウツーかなんかで以前読んだんですけど「ひっかかる馬鹿」「草ばっか生やすヤツ」「質問役」「話をすすめる説明役」みたいに役を決めると話が展開するみたいなのがありました。でもそういうこと書いてると「まためんどくさいこと考えてる」とか川添さんにつっこまれそうだ。畜生。




kazagurumax.hatenablog.com



キリストの墓にまつわる奇譚!
学生時代に青森市出身の友人に連れて行ってもらったことがあるんですが、あそこはこういう化かしみたいなものの一つや二つ出てもおかしくない場所って空気がムンムンありますよね。
逆にあれだけ胡散臭い場所をよくKazさんこんな神秘的に書き上げたな、という印象です。Kazさんは短歌だけでなく文章もいけるんですね。よどみなく読めました。青森、新郷村の描写も訪れた経験のある身としては、風が感じられるようなリアルな描写でした。
作中で、こういうことがよくあるのか、運転手さんも冷静な対応してるのが気になる。地元の人、何が見えてるんですかーー!


ちなみにこれも蛇足ですが新郷村(旧戸来村)のキリストの墓は昔なつかしい週刊少年マガジン不定期連載されていたMMR(マガジン・ミステリー・ツアー)でも取り上げられたことがあって、「戸来(ヘライ)=ヘブライからきてる」とか、「ナニャドヤラ節がヘブライ語でも意味通じる」とか、「村のシンボルが六芒星」とか、「な、なんだってーーー!!」と言わずにはいられない胡散臭さ満載でした。ノストラダムスの大予言本気で信じてたんだよなあ、あの頃。

http://j-town.net/aomori/column/gotochicolumn/206179.html?p=allj-town.net






長くなってきたので続きは次のエントリで書きますね〜。

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