nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

「かんたん短歌の作り方」から好きな短歌を48首

baumkuchen.hatenablog.jp



ねぎ/なぎさらささんのエントリから手にとった枡野浩一「かんたん短歌の作り方」(ちくま文庫)。
方法論についてはねぎさんが要点を抜書きされているので、私は個人的に好きな歌をここに引用しておきます。
「良い歌は自然に残っていく、のではなく、意識して残していくんですよ」とは「作歌のヒントNHK短歌 作歌のヒント永田和宏さんのことば。

十九年風呂にも入り慣れてるし何も考えず全身洗える

あの女もてるなぁとは思ってもあーなりてーとは思ったことない

自分のことを言われてるような気がしてつい本をハタッと閉じた気がする

しょーもないことで胸がいっぱいになってご飯がのどを通らなくなれ

あーやって実はこっちを見てますように夢か奇跡かなんかでいいいから

脇川飛鳥

月薫る秋の夜長に柿食へばカキクケコロンと涙落ちるなり

「ありがとう。私、こんなに元気です。」カキクケコロンカキクケコロン

(柚子)

(これは二首で一首だと思う)

好きな人いたんだ そっか 気づかずに回送のバスに手を上げていた

(柳澤真実)

地球には60億の人がいて友達3人 恋人はナシ

むらやまじゅん

ラブシーンがでるたびに笑うおじいちゃん、マシンガンでハチの巣にしてえ

(マイケル・弱震)

想像を絶する事件投げつけてわたしの出来をチェックする神

(向井ちはる「OVER DRIVE」)

わかり合うことは結果でわからせてやりたいだけの長いおはなし

傷ついて見えないらしい ならいいよ 血も出てないし涙も出ない

最後にはわかったんです 最初から投げ返す気のない人だって

二ヶ月間はいたジーンズ洗おうか そんなみそぎで生きながらえる

薄青のペットボトルがタクシーに轢かれる時は目をつむります

(西尾綾「ペットボトル」)

せつなさを聞かせつづけたサボテンに見たことのない花が咲いたよ

天野慶「手紙に咲く花」)

いくつもの言葉を知ったはずなのに大事なときに黙ってしまう

いつだって見えないものに覆われて知らないものに守られている

加藤千恵「今日は何の日?」)

あれじゃないでもこれじゃないそれだから生きてるってのもやめられまへんわ〜

ラヴ・ソングなんて歌っていられないもっと歌いたいことはあるんだ

梅本直志「水」)

この煙草あくまであなたが吸ったのね そのとき口紅つけていたのね

いいことがあってもいいな なんとなく好きだった人が花くれるとか

目をつむり飛び込みかけた信号でやさしく拾ってくれるタクシー

佐藤真由美「脚を切る」)

この冬は断然いつもより多く布団の気持ち良さを感じる

もし私が歌手になっても愛をくれって連呼する歌は歌いたくない

やさしいほうだとか一生懸命に生きてるだとか自分で言うな

ただほんとよく寝たっていうだけなのに自分の場所まで見つかったりした

脇川飛鳥「気がする私」)

SMAPと6Pするより校庭で君と小指でフォークダンス

遠くから手を振ったんだ笑ったんだ 涙に色がなくてよかった

ケータイの普及のおかげで突然に女便所で振られた私

笑ってもココロはいつもノーパンでスースーするからめくらないでね

犬みたいなシッポが欲しい あのひとにうれしいって伝えられなかった

たくさんの色を混ぜたら灰色になった絵の具のような終章

(柳澤真実「君と小指でフォークダンスを」)

ほしいのは勇気 たとえば金色のおりがみ折ってしまえる勇気

パピルスに初めて書かれた恋文と変わらぬ思いを受信しました

いまはもう団地の底で眠ってる秘密基地には神様がいた

かつでヒトだったすべてが見上げてる最初の花火に火が付けられる

繋いだとしたって部分 それぞれが孤独な惑星だと知っている

靴下を重ねて履いて準備する守らなければ奪われるもの

天野慶「つぎの物語がはじまるまで」)

目に見えるすべてのものをしっかりと記憶したくてまばたきをした

幸せにならなきゃだめだ 誰一人残すことなく省くことなく

加藤千恵「10年以上後」)


最後に著者、枡野浩一氏の歌を。


殺したいやつがいるのでしばらくは目標のある人生である

今夜どしゃぶりは屋根など突きぬけて俺の背中ではじけるべきだ

書くことは呼吸だだからいつだってただただ呼吸困難だった

絶倫のバイセクシャルに変身し全人類と愛し合いたい

誰からも愛されないということの自由気ままを誇りつつ咲け

気をつけていってらっしゃい 行きよりも明るい帰路になりますように


本著解説の一部を引用。読みたく(詠みたく)なれ!




最後にいうのもアレなのですが自分のものの見方には若干短調とバイオレンス性のフィルターがかかっておりまして、自分でも選んでいるうちに「殺すとかやたら多くて物騒だな…」「ネガティブな単語多いな…」とじわじわ不穏になりました。読んだ人もそう思ったでしょう。自覚はあるし、だからこそ自分で詠むときは「殺」「死」「虹」といった引力の強い語彙は意識して避ける、


努力はしています。


自分で好きだなと思った歌をたくさん集めてみると、惹かれる単語や詠みたい世界観のかたち、自分のフィルターが見えてくるのでぜひやってみて。


脇川飛鳥さんは今はこちらのtwitterアカウントで楽しめるようです。やったー!

惹かれる!

Related Posts Plugin for WordPress, Blogger...