nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル読んだった

おもしろかったので感想ログをば。



スタイリッシュグロ度★★★★★
死体いっぱい度★★★★★
キャラ立ち度★★★★★



ざくっとあらすじ

あるアパルトマンの一室で無残な遺体となった2人の女が発見される。149cmの異才、パリ警視庁カミーユ警部は部下のルイとともに捜査に乗り出す。第二、第三の類似事件が発生、それらの共通点に気づき奔走するカミーユたち。しかしその頃、カミーユの身近な者に危険が迫るーーー。


よかったとこ

登場人物の設定がしっかりしていて想起しやすい

とくに主人公のカミーユが魅力的。身長149cmの体躯ながら法学と絵画に長けた能力のある刑事として描かれている。
身長にコンプレックスがあり、寡黙かつ皮肉屋、才能溢れる画家だった母の影をひきずる中年ながらも、妻イレーヌには実直にゾッコン、みたいな。
どこの萌えキャラだ。萌えるわ。

そのカミーユをサポートするのが貴族出身で紳士なイケメン部下、ルイで、2人の凸凹相棒感もしっかり描写されていてよかった。

2015年の「このミステリーがすごい!」で話題になった「その女アレックス」はこのカミーユ警部シリーズの2作目なのだけど、「アレックス」ではざっとおさらい程度に触れられていたカミーユはじめパリ警視庁のメンバー面々のキャラ造形が、今作では細かくいきいきと描写されていた。



スタイリッシュグロい

舞台がパリであることもさながら表現がスタイリッシュかつ頃し方の描写がグロい。そのコントラストと文体のドライブ感で背筋ゾクゾクしながらサクサク読ませてくれる。
あとピエールルメートルさん塩酸好きだね、って印象でした。シタイと頃しが多いぶん凄惨さは「アレックス」以上かも。
切断、とか生きたまま、とか、グロ描写がダメな人はダメ。


エンタメに徹している

ティッシュみたいに人が死んでサクサクシタイ出てくる。書き手にとって大事なのはそこじゃないからだろうなあ。
ピエール・ルメートルは最後にこんな言葉を書いている。

文学に敬意を表する。それなくしてこの物語は存在しえなかったのだから。

この言葉通り、作品中には古今東西の文学作品の引用が随所にちりばめられている。
この作品は、過去の優れた文学作品の引用を組み合わせ、模倣をすることにより、より素晴らしい作品を生み出そうというエンタメ性の高い「実験」のように感じる。

あと、後半に、「えっ!?どこからどこまでがそうだったの!?」と、思わず最初から読みさずにはいられないようなフックがしかけられているのも、この作家さん…!と思わず本を持つ手が震えました。この手法は賛否両論分かれるところかもしれない。

あえていうなら

最後、犯人像が弱く、尻すぼみ感が否めないのが残念

カミーユとルイはじめキャラの立ち具合や美しい舞台描写、ドラマティックな伏線の張り方で「これSHERLOCKみたいにドラマ化できんじゃないかなー」と思ったけど、このラストだと難しそう(あとがき見たら、ピエール・ルメートルさんは連続ドラマの脚本作家経験もありとのこと。道理で)。
先にも書いたとおり、「犯人がなぜこのような事件を起こしたのか」といった犯罪心理やルメートル自身の人命・生死への考え方よりも、「どれだけ読者にミステリ読書を楽しませられるか」というエンタメ要素にフォーカスを当てているからかな。

www.hulu.jp





多くの古典作品、名ミステリ作品の引用、エッセンスが随所に仕込まれた作品です。
それらに精通している方は、何がどこに引用されているかでもまた楽しめるのでしょう。
いいなー。



読み終わったあと、読書メーターで他の方の感想見るのも好き。
たしかにこのタイトルはネタバレ過ぎるねw
bookmeter.com

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