就活中はリクルートスーツで井の頭公園のアヒルボート漕いでました
世はもう就職活動シーズンなんですねー。
私の就職活動ってどんなだったっけと振り返って結構楽しい思い出があったのでログ残しときます。
例によって何の役にも立たない邂逅録です。
志望してた企業のほとんどの本社が東京なので、遠足気分で夜行バス乗りまくって面接へ。
高校居時代の友人で、立川に住んでる美大浪人中のヲリちゃん(仮名)って娘に「泊めて!」と行ったら「いいよ!ついでに東京観光してけ!」と国分寺ブラブラ。
一社面接終わったあと、昼過ぎにリクルートスーツのまま井の頭公園に連れてってもらいました。
公園ではいかにもな感じのよれよれしたTシャツジーパンのおじちゃん?おにいちゃん?みたいな人が希望の言葉を書いたポストカード売ってたな。
「抹茶ちゃんお腹へってない?飲んじゃおっか」とヲリちゃんが売店でアサヒの350ml缶とぼんち揚げを買いました。
缶ビール飲みながら「せっかく東京来たんだしあれ乗ってみようぜ!」とヲリちゃんが池んとこにあるアヒルボートに駆け寄りました。
大学にいなかったタイプのフリーダムさだわさすがヲリちゃん、と思いながら私も1缶でいいカンジになってたので率先して乗ることに。
ぼんち揚げボリボリ食べながらほろ酔いでアヒルボート漕いでたらなんだか楽しくなって「うおおおおお!」とマックスで漕いでみました。ヲリちゃんもそれ観ながらぼんちボリボリ食べてゲラゲラ笑ってるし。
池の向こうのほとりでなんかカップルが私を指さしながら笑ってるのが見えたんですけど、まあリクルートスーツの女が全力でボート漕いでたら私も笑うわ。後から考えたらスカートで漕いでたからパンツ丸見えだったのかもね。
そのカップルにはさわやかに皇太子様の真似をして手を振りました。
ヲリちゃんの家に着いたら狭い1Kの部屋にドドンとエゴン・シーレみたいな裸婦の洋絵が飾ってあって、「アハハ、それ自画像」と酔っ払ったヲリちゃんが言いました。
美大入試にはその年ごとの審査員の好みに合わせて絵を製作する必要があるらしく、ヲリちゃんは心情的にどうしてもそれができなくて「多分入らないと思う」と言ってました。
私はずっとフツーの人、世間一般の人間になりたくて規格に合うように合うように必死に自分を矯正してきたけど、ヲリちゃんは多分それができないんだろうなあ。この娘の才能を私は羨ましいと思うけど、こんなに不器用でこの先どうやって生きていくんだろう。
私は自分の矮小さとシーレ様のデカイ絵を比べつつ、すでに泥酔していたのでそこらへんの床で眠りました。リクルートスーツのまま。
「リクルートスーツ着て缶ビール飲みながら井の頭公園アヒルボート漕ぐ」という思い出が自分のなかでキラキラしてるのは、誰も私のことを知らない土地で何者にもならない時間を生まれてはじめて謳歌できたからなんじゃないかと思ってます。
その後私は英会話学校の営業に就職、そこの社長が社長室にジャグジー作って各方面から訴えられて倒産w(わたしは本格的に給料不払いになる前に辞めてた)、いくつか教育関係に転職したり〜中略〜何人かから愛人契約を求められたり75歳の社長にストーカーされたり何者かになったりならなかったり、をまだ続けてます。
ヲリちゃんは事務に勤めて他人の尻拭いを任されるくらい仕事がバリバリできたらしいけどあるとき、「あーーー!!」と全部投げ出してすごく温厚そうな旦那さんと結婚。あの頃のアナーキーなカミソリみたいなオーラはみじんも感じない優しい二児のママになり、絵も描いてないそうな。