20140426母とふたりの私
土曜日、実家へ。
ここいらでもようやく桜が咲いて、浮かれ陽気だ。
母と居間でふたり留守番。わたしが本を読んでいると、向こうで寝転がっていた母がとつぜんぽつりと「はい、はい、うん、わかった」とひとりごと。
「どうしたの?」と尋ねると、
「今おとうさんから電話があって、もうすぐ帰ってくるって」
でも電話は母から遠く、わたしの背中側にあるのだ。電話が鳴った様子もない。
父が帰ってくるまでに、母のそんな架空の世界とのやりとりが3回くらいあった。
母はきちんと1日3回病気の薬を飲んでいるけど、この頃そんなことが増えたようだ。
過去に2度ほど大きい発作を起こしているので、これくらいでは父も驚かなくなった。
父の話では、よく私から電話がかかってくると言っているらしい。
私はそこまで頻繁にかけていない。
多少よかったな、と思えるのは、母の聞こえる架空の世界がいくぶんか母に対して優しいようだということ。
先に受け答えしていた声も穏やかだ。
頻繁に電話をよこすらしい向こうの世界の私も、きっと実在のそれより優しい。
すこし申し訳なくも思う。