nerumae

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柔道のルール改正2014で注意するべき技や試合展開まとめ

柔道経験者の個人的なまとめです。試験的改正だそうで、今後も変わる可能性があります。
が、今後変更があってもおそらく国際柔道連盟が目指すおおもとのビジョンはブレないでしょうから、一般の人も今後オリンピック等での試合観戦を視野に、ちょこっと頭に入れておくとより理解しやすいのではないかと思いログします。
※ざくっと調べた感じなので間違いがあったらご指摘ください

http://www.flickr.com/photos/88791502@N00/5544935813
photo by n8xd


柔道のルールが段階的試験的に改正

2014年ルール改正の大きな目的

「より一本に重きをおく柔道を目指すため」

これまでの国際柔道は、実力が拮抗するほど膠着状態でポイント判定にもつれこむ試合が多くありました。
また下半身へ手をかけることについての制限が曖昧だったため、柔道技としては懐疑的なレスリング的タックルをかける、技をかけられるのを嫌って腰を引き、相手の下半身を手で押し牽制するといった、おおよそ本義の柔道の精神とはかけ離れた試合内容も見られました。
改正はそのような積極的に一本を取りに行かない姿勢に対し厳しいペナルティをあたえ、柔道の真髄としての「美しい一本」を推進するものです。



試合展開上の大きな変更点

・ブリッジでこらえたり相手の背中がつかない状態でも一本とみなす

綺麗に投げられて一回転、相手の身体が柔らかくブリッジして背中をつけずに着地、ということがまれにあります。
以前までは試合続行していましたが、今後は背中をついていなくても一本とみなすことに。
ちなみに俗称「スーパー一本」だそうです。
関連過去記事:柔道新国際ルールで「スーパー一本」ができたらしい - nerumae

・寝技の時間短縮

おさえこみの時間が各5秒ずつ短縮。
また、場外際で寝技をかけられた場合、寝技の最中に両者の身体が完全に場外に出ても時間計測は続行。
(改正前はどちらか片方の身体が場外から完全に出た時点で寝技が解けたとみなし、「まて」がかかりました)

・「効果」の廃止

有効より小さな技判定「効果」をなくすことで、より一本を目指す技の展開をすすめるもの。

・「指導」を取られるタイミングが早くなった

効果が廃止になったかわりに「指導」を厳しくとるようになりました。
これは長い膠着状態、技をかけない状態による時間稼ぎ、ポイント判定を回避するため。
マジでめっちゃ早いです。

・帯下の下半身に手をかけることは反則負けにつながりやすくなった

基本的に、最初から脚取り狙いで下半身に手をかけることは即反則負けになりました。
ポイントは以下。

・小内巻き込みなど手と脚両方に同時に技をかけるのは即反則負け
・脚取り目的でかける投げ技(「偽装的攻撃」)の連携も即反則負け
・朽木倒し、掬い投げなど下半身に手をかける技は本気の投げ技からの連携の場合のみ使える



かなり使いにくくなった技

以下の技は単体での使用は反則になります。投げ技からの連携としてのみ使用可能です。

1.小内巻き込み


【自己満シリーズ】小内巻き込みの投げ込み - YouTube
※小内刈り→巻き込みと二段階の攻撃ならOK

ルール改正を受けて元プレイヤーとしての雑感

技の概念そのものを考え直す必要がある

Q5 「小内巻き込み」を行う場合、相手の脚を抱えることは「反則負け」か。

「谷落とし」を掛ける場合と同様に足による攻撃と腕による攻撃に明確な時間差がない場合(同時)は「反則負け」となる。「反則負け」を避けるためには、腕による攻撃を遅らせるか2段モーションのようにする工夫が必要となる。

中長期基本計画 | 全日本柔道連盟より

私は小内巻き込みが得意技のひとつだったのですが、「小内刈り」と「巻き込み」をほぼ同時にかけていました。正確にはその覚え方は誤りかもしれませんが、今まで同時にかけることに罰則がなかったのです。自分の習得した技そのものをもう一度見直す必要があります。
とはいえ、身体で覚えてしまったクセを修正するのはなかなか難しい。技をかけるときに萎縮してしまうのは私だけじゃないのでは、と思います。

「フェイント」の概念はなくなる

Q6 「背負い投げ」を掛けたのちに足取り(朽木倒し)を行なうことは「反則負け」か。

足取りに行くための手段として「背負い投げ」に入ったと判断された場合は「反則負け」。「反則負け」を避けるためには、相手を投げようとして「背負い投げ」に入り、連絡技として足取りを行なうことが必要である。
中長期基本計画 | 全日本柔道連盟より

本来の柔道は相手の力を利用して相手を投げる、倒すといった武道です。相手の力をうまく引き出すための手法のひとつとしていわゆる「偽装的攻撃」、フェイントがあります。今後このフェイントも試合で反則をとられるということで、フェイントも多用していた私としてはつらいです。

あとQ5,Q6ともにかなり曖昧な基準なので、審判によって判定に開きがでないかも懸念材料です。


おわりに

全体を通してみると、今回の国際柔道連盟のルール改正は近年問題となっていたいわゆる柔道の「JUDO」化を回避するためのものなのだとわかります。

ルール改正を知った時は自分の得意技が実質禁止になってかなり動揺してたけど、落ち着いたらドボン会長のこの見解は全く正しい。




 11月末から行なわれたグランドスラム東京の際、来日した国際柔道連盟ビゼール会長は、すでにルール変更を示唆していた。

「伝統も重要ですが、時代は変化していっています。嘉納治五郎氏が時代に合わせて柔道を育てたように、時代に合わせ、柔道を発展させていかなくてはいけません」

「一本が究極の目標である、美しくてスペクタクルな柔道を提示していかなければなりません」

「一本を取る」見栄えのする柔道へ。新ルールに日本は対応できるか?(2/3) - 柔道 - Number Web - ナンバーより


柔道は武道です。心身の根幹を鍛えることが目指すべきところです。

ポイント制ではなく一本を目指すための柔道、力で強引にねじふせるレスリング様の柔道でなく本来ある技をきっちりとかけ、相手を倒す柔道。

そのような本義の「柔道」に世界のプレイヤーが回帰してくれることは柔道を愛していた誰もが望んでいたことですが、その影で巻き添え事故のように、運動力学を利用した「柔よく剛を制す」の多様な技が剪定されてしまうのはちょっと寂しくも感じます。「柔道とは何か」を常に問い続ける必要があります。

まだ試験段階ということなので適宜進化していくんでしょうけどね…。



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