nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

文章スケッチ「夕立」

文章スケッチの練習です。
ぜんぜん書いてないので不安です。
虚無透さんよろしくお願いします。

http://novelcluster.hatenablog.jp/entry/2015/06/20/000000_1novelcluster.hatenablog.jp

http://www.flickr.com/photos/24174433@N04/14137379645
photo by jayRaz



とっ、とっ、と雨粒がアスファルトに濃い点を落とす。

はじめは気づかないほどの点在だったのが、空から落ちてくる雨はあっというまに勢いを増し、とたんにざああ、と音をたてて道路の色を滲んだチャコールグレーに変える。

雨粒は公園に咲いた紫陽花の葉をたたき、滑り台のトタンの上をすべり、ブランコの木の肌を湿らせ、昼間のうちに子供たちのつくったのだろう、砂場の小山へと浸っていく。

その公園から見える団地では、いままで立ち話をしていた主婦らしき女たちが蜘蛛の子のようにちりぢりにはける。
団地の上階では同じように女がいそいそとベランダに干していた布団をとりこむ。また別の部屋はいそいでぴしゃりと窓をしめる。
その下の階の部屋では幼稚園児ほどの背丈の子供たちがベランダへ、傘をさして出てくる。

すっかり濡れてしまった路面からは、アスファルトの湿ったにおいと公園の土のにおいがまじってたちあがってくる。

そのうちに、団地の入り口から、母親と女の子が出てくる。
母親はベージュの傘を、女の子はパステルイエローの小さな傘をそれぞれ手に持っている。
母親の傘を持つ手の反対側には、紺のひとまわり大きな傘が握られている。
二人はぱん、と各々の傘をひらき、雨のなかを歩みだす。

母親と女の子はそのまま駅へと向かう。
二人の背がすっかり見えなくなった頃には、さきほどまでの雨の勢いは消え、西の鈍色の雲間からほそい夕焼けの光が差し込んでいた。

(約590字)

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