マレマレウによるアイヌの輪唱「ウコウク」ライブでトランス体験
アイヌ音楽のライブに行ってきたのでログ。
「マレマレウ」はアイヌ民謡の伝承を目的に結成した女性ボーカルユニット。
Rekpo、Hisae、Rim Rim、Mayunkikiの4人。
ライブ前にはマレマレウによるアイヌ民謡のワークショップがあった。参加者で実際に彼女たちにつづいてアイヌ民謡を輪唱する。
MAREWREW performs "Hawsa" Ainu music - YouTube
歌っててキモチイイ
アイヌの歌の基本は「ウコウク」と呼ばれる輪唱。
なぜ輪唱がメインなのか?と訊くと「歌っていて気持ちいいから」。
なるほどたしかに気持ちいい。
気持ちいいのだが、ちょっとこれは、ヤバイ感じのほうの「キモチイイ」なのではないか、でも文化にそんな言い方しちゃっていいのかな、とまごまごしてたら、
「トランス状態に入るからね。ガチで入りたいアイヌは3人で頭くっつけて肩を組んで歌う」
と自称「しゃべり担当」のMayunkikiがこたえた。
あ、やっぱりこれトランス楽しんでるやつなんだ。
「アイヌの人達って寒いし娯楽がなかったから、そうやって歌ったり、踊ったりして遊んでた」
輪唱トランスのほか、ところどころ本土の民謡ではあまり馴染みのない発声方法があるのも興味を惹かれた。
youtubeで以前観たホーミーの動画で、2人の恰幅のよい女性が向かい合わせに肩を組んであの独特の声帯を絞る歌唱法をやっているのを思い出した*1。
Nukariik Inuit Throat Singers - YouTube
「ホーミーにも何か関連性があるのか」と聞いたけれども「たぶん無関係」と返答が返ってきた。あちらも独特だけれどもアイヌでは倍音の歌唱法はないとのこと。
倍音の意味がわからなかったので後ほどぐぐったが、これも一定周波数内の規則的反復でトランスっぽい作用を生んでいる気がする。
あと、アイヌの人々が遊びとして歌っていた歌は、基本即興らしい。
ある人Aが持つ「持ち節」みたいなのを複数の人達が輪唱して何回か節がまわると、「よっしゃ」とばかりに別の人Bが自分の節を差し込む、また輪唱、また別の人Cが入る、といった具合。
いろいろおもしろいアイヌの文化
・アイヌの着物
アイヌの着物、トライバルっぽいが「特にこれといった文様の決まりはない」とのこと。ただし旭川はこれ、他の地域はこれ、といった地域ごとの特徴はある。
手足の袖口にある模様は主に棘を表している。「袖から悪いものが入って来ないように」という思いを込めて刺繍をする。
・神様と人間は同等
神様と人間は同等で、供物やるから力を使ってくれや、みたいな契約関係の宗教観らしい。あと熊とエゾシカも神様。仕留めたときに神様の国にかえすおそなえと儀式をする(悪い熊/エゾシカにはおそなえをしない)。
鮭もいちおう神様にカウントされてるけど、いっぱいいすぎて儀式がおっつかないから、「神の国送り」の棒でポコンと頭を叩いて儀式をやったことにする。棒叩きはビッタンビッタン動く活鮭を気絶させる用途も兼ねている。合理的である。
神道、八百万、アニミズムに近いのかな?
・忘れないように家をつくる
このエピソードを語るときのHisaeの顔がいちばん印象に残った。
「触れてないと、忘れちゃうから、たまにアイヌの家もつくる」
「え、家?たいへんじゃないですか。そんなすぐに作れるもんなんですか?」と訊くと、「笹でつくるのよ。すぐできるの、3ヶ月くらい」
笹葺きですぐできる*2、といっても、家をつくるという作業、しかも3ヶ月かける、というのは一般的に、「忘れちゃうからつくっとこー」と思ってやる感じでもないような。
彼女たちはアイヌという文化のなかに今も生きているけれど、それでも「忘れないように家をつくる」の言葉が象徴するように、意識してアクセスしないと薄れていってしまう、維持の難しさは確かにあるのだと思う。
この日のライブにはOKIさんも来てたのです。
カッチョエエ。トンコリの音色きれいだった。
https://itunes.apple.com/jp/album/saranpe/id550025858?i=550026204&uo=4&at=10l14825
https://itunes.apple.com/jp/album/zhou-caogi-youbi/id550025858?i=550026167&uo=4&at=10l14825
いい歌だった。
https://itunes.apple.com/jp/album/phoenix-dub/id432061091?i=432061127&uo=4&at=10l14825
*1:後日ぐぐったところ、当該の動画はホーミーではなくイヌイットの歌唱法とのこと。イヌイット、アイヌ、ホーミーの喉を使う歌唱法を総称して「喉歌」と呼ぶらしい 喉歌 - Wikipedia
*2:「チセ」ですかね。http://www.chinetsu.jp/cise01.php