マンガ版「風の谷のナウシカ」他作品とのリンク部分など
8月24日読了。アニメ版とちがうちがうとは聞いていたがここまで違うとは思わなかった。マンガ版のほうがより壮大だ。
「風の谷のナウシカ」は宮﨑駿監督が「アニメージュ」で連載していたマンガ。
映画製作をはさみながらだったので途中中断をはさみながら、完結までに12年かかったという。全7巻。
以下思ったことざっとログ。
ナウシカというか宮﨑駿がぜんぶ詰まってる
物語のベースはもちろんナウシカなんだけど、ところどころ他の宮崎作品のエッセンスもつまっている。
目立つところでいえば、闇の力を吹き飛ばされたあとの土鬼(ドルク)帝国神聖皇弟ミラルパは「千と千尋の神隠し」のカオナシ。
自分の求めるものがわからずにナウシカについていき、そこで安住の地を見つけるところはそのまんま。
「森の人」セルムは同「千と千尋」からハク。
後半、ナウシカが巨神兵とたどり着いた世界から隔離された「庭」はラピュタだし、そこに住む太古の人類が造った「神」の諭しは、表現はちがえど「ラピュタはよみがえる、何度でもな!」と「人は戦争をくりかえす」ことを示唆したムスカの言葉とリンクする。
トルメキアの第3皇子に仕えていた宝石持ってまっさきに逃げる将軍も、ラピュタの将軍かな。
生物兵器として改造された粘菌が土地を腐食していくシーンは「もののけ姫」のダイダラボッチ。
ラスト、「シュワの墓所」で頭部だけとなった墓所を守る教団員たちがぴょんぴょん追っかけてくるシーンは「千と千尋」の頭だけ入道。
飛行艇での戦闘シーンの楽しさは「紅の豚」で、「もののけ姫」では人間の傲慢さ、自然と文明との併存、森の再生というアニメ版ナウシカで描ききれてなかったところを補完してるかな。それにしても戦闘シーンはやたらエキサイティングに描写されてて宮崎監督戦争が好きなのか嫌いなのかどっちなんだい、と思った。戦争は嫌いだけど飛行機は好きなんだろう。
wikiに目を通したら「トトロの原案も入っている」と書かれてたので、よくよく探せば他にもいっぱいあると思う。マンガ版ナウシカにはナウシカの物語というより宮﨑駿が伝えたいことほぼすべてが詰まっていて、それらのうちの際立ったモチーフがナウシカ以降の別作品となってカットアウトされている感じなんだろう。
戦争や人をより具体に描写してる
マンガ版ナウシカはアニメ版よりも、より克明に戦争の残酷さや人のおろかさを描写している。
戦闘や爆撃シーンで手足はバンバン吹っ飛ぶし、土鬼帝国の人民は混沌と苦しみから逃れるため宗教を盲信する。
作品内で被差別人種として描写されている「蟲使い」の一族は森の人セルムやナウシカを女神として崇拝するが、セルムが自分たちに理解のできない行動をとると、とたんに「俺たちの頭が悪いと思って森の人はだまそうとしている」と疑心をいだく。
蟲使いが死者の亡骸から金品をとっているのをナウシカがみて、激昂してやめさせたシーンがあった。蟲使いたちはキョトンとして「これみんなナウシカのもの だから怒らないで」と盗った金品をナウシカに差し出す。なぜナウシカが怒っているのかわからないのだ。
うまく表現できないけどここらへんが民族で人なんだろうなと思う。