nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

「教科書で出会った名句・名歌三〇〇」(石原千秋監修)読んだ


さいきんはもう500円以下の短歌関連の文庫なら「買う」と思った次の瞬間にもうその行動が終わっている。プロシュートの兄貴ィ*1
タイトル通り、教室で、どこかで聞いたことのある俳句・和歌・短歌を集めたもの。
監修者である石原千秋の解説”「自然」という思想/「ひとり」という思想”から思ったことをログ。

石原さんによれば、これら定型の詩歌に詠まれるモチーフは「自然」から「ひとり」へ遷移している、という。その決定的なターニングポイントが近代にあるとも。

咳をしても一人

   尾崎放哉


 たしかに私も通して読んでいてそう思うし自分でも詠んでいて思う。自分から離れて自然を客体を詠もうとすればするほど、離れがたい「自分」の輪郭に気づいてしまう、ということは前にも書いた(題詠短歌100首よんでその感想だよー - nerumae)。自然、客体はいつだって完璧で、それに相対しようとするほど、この完璧に対しての自分はなんなのか、という「ただひとりの我」に対する視点や疑念がわいてくる。なんとなく自分が近代短歌に惹かれてしまう理由もわかった気がする。




でまあ、その「ひとり」のストリームを「しなやかに拒否」したのが俵万智の新しさだという。

「寒いね」と話しかければ「寒いね」と答える人のいるあたたかさ

   俵万智


ああ…なんとなく自分が俵万智をもろてで受け入れられない理由もわかった気がする…。





収録中の好きな俳句・短歌をいくつか。





菫程な小さき人に生まれたし       夏目漱石



夕立やお地蔵さんもわたしもずぶぬれ   種田山頭火



青蛙おのれもペンキぬりたてか   芥川龍之介



こんなよい月を一人で見て寝る   尾崎放哉



吾妹子が植ゑし梅の木見るごとに心むせつつ涙し流る   大伴旅人 万葉集




真砂ナス数ナキ星ノ其中ニ吾ニ向ヒテ光ル星アリ   正岡子規




いつしかに春の名残となりにけり昆布干場のたんぽぽの花  北原白秋




葛の花踏みしだかれて、色あたらし。この山道を行きし人あり   釈迢空




桜ばないのち一ぱい咲くからにいのちをかけてわが眺めたり  岡本かの子




ぞろぞろと鳥けだものをひきつれて秋晴の街にあそび行きたし   前川美佐雄

*1:ジョジョの奇妙な冒険」第5部より

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