nerumae

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ハード裏社会BL「コオリオニ」がパラメータMAXで胸焼けしまして


なめくじ長屋寄考の劇画狼さんが「こりゃスゴイ」と絶賛しておられたので気になって購入。
一度で消化はできません。咀嚼しきれなくて胸焼けがまだしてる。


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いちおうBLの範疇ですが、確かにそんなカンタンな既存のくくりでは片付けられない、食道にマグマ流し込まれるみたいな感覚になる作品でした。
BL、極道もの、警察もの、ハード、後味悪い、道警、指詰め、虐待、クスリ、フィスト、妊ポ、ワールドイズマイン、これらのなかでNGない人は読んで損はないと思います。あ、爪を切るみたいなカジュアルさでバッチンバッチン足の指詰めてます。


以下あらすじと良かったとこあえて言うならのところをログ。


あらすじ

舞台は北海道。道警のエース鬼戸 圭輔(きど けいすけ)は極道に身をおく八敷 翔(やしき しょう)に近づく。狙いは翔を情報提供者(エス)として利用し、道警の功績をあげるためだった。
「負け組」としての人生から逃れるため一発逆転を狙う2人だったが、計画がばれ・・・

テーマ

ぐっちゃぐちゃに入り組んでますけど、その中から敢えて拾うとすれば、
「生きたいように生きる/社会の中で生きるとは」
「普通と異常」
「生きづらさ」
「道警と極道の癒着」

かな。

良かったとこ

・構成と伏線が巧み

主人公2人の幼少のエピソードまで含めるとかなり長くて濃い時系のお話を、巧みに前後左右させて物語を進めています。
よく上下巻でまとまったなってくらい。
たとえば、
ストーリー前半部の中核になる計画を実行するぜ!→その実行シーンをバッサリ切って暗転→いきなり準主人公の耳がモゲてる!
とか。
この大胆で独特なシーン構成は作者さんの武器、センスなんだと思う。
よくよく読んだら登場人物に仕込んだ伏線のひとつひとつも丁寧につながれてて、この作者さんどれだけ時間かけて構想練ったんだろうなあと感嘆しますわ。

・上下巻で見えるものがまったく違ってくる

この作品、みえてくるテーマが複数あって、そのどれもが地獄の釜ゆでチャンポンみたいにグチャグチャドロドロに配置され煮詰まってる感じなのですが、その中でも観るべきが「八敷 翔」というキャラクター、そして彼が持つ「異常性」。

上巻2/3くらいまでは翔が悲劇のヒロインのように可哀想で、「ダメな男に尽くして振り回されて仕方なく自分もヤクザになった」という風に見えるのですが、実はこれは(おそらく)翔自身の主観。
後半から下巻にかけては180°世界が変わって見えます。

「自分は悪くない、自分は被害者だ、悲劇の主人公だ」、と現実の自己と異なるとらえかたをするのはいわゆるサイコパス、「邪悪」と呼ばれる人々の特徴だ、というのを昔なんかの本で読んだことがありますが、たぶん翔がそんな感じなんでしょうね。


描写のハードさリアルさに目がいきがちだけど、この作品のホントの売りはヤクザにならざるをえなかった翔の、佐伯の、そして汚職警官となった鬼戸の背景描写です。


人生って、ささいな分岐の選択を積み重ねて、サイコロを振って幸せの目が出たり不幸の目が出たりして、どこかに転がっていくようなものだと私は思っています。
けど残念ながらこの「コオリオニ」に登場する3人は、虐待とか障害とか地域差別とか、その分岐の最初が不憫にも自分で選べなかったり、なぜか不幸せの目ばっかり出て「彼ら」になってしまっているんだよね。自分が、誰もが、分岐であるいは出たサイコロの目で彼らになり得る。なり得た。



あえて言うなら

・描写がハード/絵柄が好み分かれる

上記の大胆でスタイリッシュな展開のほか、「潜入取材してきたんすか…」ってくらい地に足ついた極道界描写や、極道と警察・ロシアとの癒着具合の描写なんかが力入ってて、警察小説や極道シネマが好きな人の参考資料としてもオススメしたいんですよ。
けどねえ、いかんせん描写のハードさがオセッセから暴力、ヤクまでまんべんなくパラメータMAXなのと独特の絵柄とで、BLに抵抗ない人でも相当好みが分かれると思うんですよね。
自分は振り回されるストーリー展開も指詰めもガチムチもむしろ好みだったんですけど、最後まで翔の「女と見まごう美しさ」の絵がなんかちょっとツボに入らなかったんだよなあ。
あと描きおろし、佐伯俊彦編は素晴らしかったけど最後の南の島編はナシで船上メリーバッドエンドのままでいいのでは、と思いました。
上記をふまえてストーリー重視!グロいの平気!って人はぜひどうぞ。


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丹念に取材をされていたみたいで、その中のこれが気になったぞ
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道警といえば北海道新聞社とのドロドロを暴露したこのノンフィクションも面白かった!

感想文
nerumae.hateblo.jp

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