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「少年と犬」を読みましてね

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馳 星周
2020年5月15日第一刷 

あらすじ

舞台は東日本大震災後の仙台から始まる。一匹の迷い犬と、ふとした偶然でかかわる人々の物語6篇。運び屋、泥棒、娼婦、老人、さまざまな人にさまざまな名で呼ばれ、生き死にをその目で見届けながら、「犬」はなぜ「南」をめざすのかーーー。

感想

第163回直木賞受賞&馳星周先生&動物ものということで手にとった本。馳先生のブラックノワール小説が学生時代から好きでした。
それだけに直木賞受賞作の「震災」「犬」「少年」のキーワードを聞いたときは「うそでしょ馳先生まさかのハートフルですか!?」と思ったが、ページをめくって一安心。のっけから犯罪者と出血の馳星周ワールドでした。そして泣きました。

好きな賞は第2章「泥棒と犬」、第4章「娼婦と犬」、第5章「老人と犬」。
「泥棒と犬」は外国人犯罪者が「犬」を連れて本国への帰路、同じくイスラム系外国人のドライバー「ハーミ」と兄弟の契りをかわす話。
主人公のミゲルが犯罪者にならざるを得なかった背景、ハーミとの会話のなかで、「犬」を逃してあげることにしたミゲルの心の動きが好き。ラストのカタルシスも救いがなくて好き。

「娼婦と犬」は技巧的にドラマのようで好き。伏線となる美羽のセリフ「昔からそうなんだ、わたし。どっか抜けてるの。頭が悪いんだよね」も好き。
ラスト、美羽が「レオ」の首輪にもたせた次の飼い主への手紙も好き。優しい人がむくわれる世界になりますように。

老人と犬」は弥一の孤独が好き。弥一が最後、ひとりじゃなくて本当によかったと思う。
馳先生、ノリツネを最後までそばにいさせてくれてありがとう。

鎮魂と巡礼としての物語

 ここからは邪推ですが、この物語は、東日本大震災や、熊本大地震で被災し、多くを失った人たちへ向けての鎮魂ではないかなあと感じました。
震災で亡くなってしまったあなたの大切な人も、最後は決して独りではなかったよ。傷ついたあの人にも、きっと「多聞」が寄り添ってくれていた。そう信じたくなる、よい物語でした。

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