nerumae

ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

文章スケッチの広場「鳥」

ご無沙汰しております。
お久しぶりの文章スケッチをしてみます。
お題は「鳥」です。鳥の中でも「鶏」を描写してみました。
よろしくお願いします。

http://novelcluster.hatenablog.jp/entry/2016/02/20/000000novelcluster.hatenablog.jp


http://www.flickr.com/photos/8070463@N03/8755805762
photo by Tambako the Jaguar


 老年の農夫が指差す方向、家屋の奥のほうへ歩みをすすめると、その小屋はあった。
 成人男性の腰丈くらいの小屋。木造だ。かなりの年数が経っている。釘の打ち方や板の並び方がところどころ不揃いだ。既製品ではない。
 そのなかに、鳥が何羽かいる。
 鶏だ。


 白、茶色、黒、複数の色の鶏がいる。
そのうちの一羽をみてみる。

 その鶏は体表を真っ白い羽根で覆われている。
 羽のボリュームを差し引いてなお、体躯自体が成熟していることがつたわる。
 肉を食用として使われるブロイラーと呼ばれる種類である。

 ふっくらとした胴体の終点には、同じく白色の尾羽根が広げられている。その反対側には、円錐状に伸びた頸部。その頂点には、濃い紅色のとさかにふちどられた頭がついている。

 とさかとくちばしが結ぶ線の中間点には、目玉が2つついている。鶏のもつフォルムの中で一番真円に近い形状だ。薄暗い鶏小屋の中にかすかに差し込む陽の光をときおり反射させている。

 まるまるとした胴体のフォルムとは対照的に、頸部は細く、そしてせわしなく動いている。鶏が歩くたびに頸部はとさかをふるわせて前後に揺れる。左右に首を振り周囲を見渡す。食餌ケースに首をつっこみ飼料をついばみ、ついで水のケースに嘴をぬらす。
コッココ、と時おり喉を鳴らし、他の色違いの鶏たちのからだに首をつっこんでいる。

とさかはそのたびにふるふると震えている。

(600字)

「悲しみのイレーヌ」ピエール・ルメートル読んだった

おもしろかったので感想ログをば。



スタイリッシュグロ度★★★★★
死体いっぱい度★★★★★
キャラ立ち度★★★★★



ざくっとあらすじ

あるアパルトマンの一室で無残な遺体となった2人の女が発見される。149cmの異才、パリ警視庁カミーユ警部は部下のルイとともに捜査に乗り出す。第二、第三の類似事件が発生、それらの共通点に気づき奔走するカミーユたち。しかしその頃、カミーユの身近な者に危険が迫るーーー。


よかったとこ

登場人物の設定がしっかりしていて想起しやすい

とくに主人公のカミーユが魅力的。身長149cmの体躯ながら法学と絵画に長けた能力のある刑事として描かれている。
身長にコンプレックスがあり、寡黙かつ皮肉屋、才能溢れる画家だった母の影をひきずる中年ながらも、妻イレーヌには実直にゾッコン、みたいな。
どこの萌えキャラだ。萌えるわ。

そのカミーユをサポートするのが貴族出身で紳士なイケメン部下、ルイで、2人の凸凹相棒感もしっかり描写されていてよかった。

2015年の「このミステリーがすごい!」で話題になった「その女アレックス」はこのカミーユ警部シリーズの2作目なのだけど、「アレックス」ではざっとおさらい程度に触れられていたカミーユはじめパリ警視庁のメンバー面々のキャラ造形が、今作では細かくいきいきと描写されていた。



スタイリッシュグロい

舞台がパリであることもさながら表現がスタイリッシュかつ頃し方の描写がグロい。そのコントラストと文体のドライブ感で背筋ゾクゾクしながらサクサク読ませてくれる。
あとピエールルメートルさん塩酸好きだね、って印象でした。シタイと頃しが多いぶん凄惨さは「アレックス」以上かも。
切断、とか生きたまま、とか、グロ描写がダメな人はダメ。


エンタメに徹している

ティッシュみたいに人が死んでサクサクシタイ出てくる。書き手にとって大事なのはそこじゃないからだろうなあ。
ピエール・ルメートルは最後にこんな言葉を書いている。

文学に敬意を表する。それなくしてこの物語は存在しえなかったのだから。

この言葉通り、作品中には古今東西の文学作品の引用が随所にちりばめられている。
この作品は、過去の優れた文学作品の引用を組み合わせ、模倣をすることにより、より素晴らしい作品を生み出そうというエンタメ性の高い「実験」のように感じる。

あと、後半に、「えっ!?どこからどこまでがそうだったの!?」と、思わず最初から読みさずにはいられないようなフックがしかけられているのも、この作家さん…!と思わず本を持つ手が震えました。この手法は賛否両論分かれるところかもしれない。

あえていうなら

最後、犯人像が弱く、尻すぼみ感が否めないのが残念

カミーユとルイはじめキャラの立ち具合や美しい舞台描写、ドラマティックな伏線の張り方で「これSHERLOCKみたいにドラマ化できんじゃないかなー」と思ったけど、このラストだと難しそう(あとがき見たら、ピエール・ルメートルさんは連続ドラマの脚本作家経験もありとのこと。道理で)。
先にも書いたとおり、「犯人がなぜこのような事件を起こしたのか」といった犯罪心理やルメートル自身の人命・生死への考え方よりも、「どれだけ読者にミステリ読書を楽しませられるか」というエンタメ要素にフォーカスを当てているからかな。

www.hulu.jp





多くの古典作品、名ミステリ作品の引用、エッセンスが随所に仕込まれた作品です。
それらに精通している方は、何がどこに引用されているかでもまた楽しめるのでしょう。
いいなー。



読み終わったあと、読書メーターで他の方の感想見るのも好き。
たしかにこのタイトルはネタバレ過ぎるねw
bookmeter.com

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