悪人はいない、あるのは組織ー「真実 新聞が警察に跪いた日」読んだ
読みましたー。はあー、面白かった。濃かった。
小説じゃないので人物描写に文字数を割いておらず、最初ちょっと情景把握に時間かかったけど、横山秀夫「64(ロクヨン)」を読んだあとの方、警察小説が好きな方は楽しめると思います。
以下あらすじとさらっと感想。
あらすじ
著者・高田昌幸は北海道新聞社に記者として勤務中、北海道警察の裏金作りの内部告発を受け調査取材を開始、これを大々的に報道。
ところが後日、高田は一部事実と反する記載があったとして元道警幹部・佐々木氏に名誉毀損で民事訴訟を起こされる。
彼の知らぬところで秘密裏に道新内部幹部と元道警・佐々木氏の和解会談、道新と道警の関係を修正するための「手打ち」のストーリー作りが進められていたのだ。
覚せい剤と大麻の密輸に関わる警察の「泳がせ操作」の失敗から浮かび上がる警察と暴力団の癒着、高田が取材を進めるうちに見えてくる「組織」の中に埋もれた警察官、新聞記者、ひとりひとりの表情。
国家権力と監視機関とのただれた依存関係のなかで、「真実」と「新聞があるべき姿」を追い求め、著者がもがいた10年間を記す。
いんしょうにのこりました
・キャリアとノンキャリ
「64」でも触れられた警察組織の深い闇のひとつに「キャリアとノンキャリ」の関係があるんだけど、本書で挙げられた裏金工作問題でもその力関係が浮き彫りになっていた。
ノンキャリ組が裏金作りの書類を作り、キャリア幹部がそれを悠然と使う。決してキャリア組は自分の手を汚さないようになっている。
高田氏を訴え、本の回収・撤廃を求めた元道警・佐々木氏も、総務部長まで勤めたとはいえ、ノンキャリ組だ。しかもその訴えの目的とするところは氏が主張するように佐々木氏本人の名誉のためというよりは、北海道警察という「組織」のため。
本書の中には警察官としての心情と組織との間に板挟みになって、自死を選んだ署長のエピソードも出てくる。
・悪人はいない、あるのは「組織」
道新と道警の和解を迫る秘密会談では、道新の幹部たちがかわるがわる佐々木氏にコンタクトを取る。
その裏文書を読んで高田氏は自分が仲の良かった元同僚記者からすらも「あいつ、地獄に落ちろって」と言われていたことを知る。憤慨する高田氏に先輩記者がかけた言葉。
「高田も知っての通り、あいつは基本的にいいやつだ。おまえも社会部の記者時代、一緒の部にいたそうだから、わかるだろ?でも、おおきな流れの中では、あんなことを言ってしまうんだ。
組織は右へ左へ、ざーっ、ざーっと動く。その時々では人は大きな流れに身を寄せる。そういうもんだ。だから、おまえ、許してやれ。あいつを許してやれ。」
道警の「裏金工作」報道後、あらたに記事になった「泳がせ捜査の失敗」。高田は取材を進めていくうちに、泳がせ操作と呼ばれる警察の動きの裏にもっと重篤な真実があったことを知る。暴力団との癒着による情報取引、犯罪の見逃しだ。
泳がせ捜査に関わり、のちに自身も麻薬取り締まり法違反で懲役を受けた元警察官・稲葉氏は高田氏に「あなたにとっての警察とは、組織とはなんなんですか」と問われこう言う。
「組織、組織ってみんな言うけど、得体の知れない化け物です。現役時代は、まるで生きてるように思ってましたし…」
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「64」読んでるときにも思ったんだけど、組織って、警察ってなんなんでしょうね。改めて考えさせられる。
言いたいことがたくさんあるのですが筆力が追いつかないのでこれまで。