業の深さを正面から受けとめる
地下アイドルが見たエロ本業界 - 地下アイドル姫乃たまの恥ずかしいブログ
タイトルの「エロ」「アイドル」のキーワードで回避していましたが、どっこい読んでみたら文体も文章構成もテーマもしっかりしていてとても面白かった記事。
筆者の姫乃たまさんの真面目さが十二分に伝わる、グイグイ引き込まれる文章でした。
これ読んで思ったこと2つログしときます。
業の深さを正面から受けとめる
雑誌の感想や、誰にも話せない身の上話、障害や性癖のカミングアウト、半生を何十枚にもわたって手書きで送ってくれた人や、120分カセットテープ二本にびっしりアカペラで自作の曲を録音したもの、手作りのケーキ、クリスマスカード、年賀状、私のバースデーカード、エロ本を愛する私と読者の不器用で熱量の多いやりとりが重なっていきます。
人のエロとかメンヘラい部分とかっていうのは業の深さの最たるところで、他者のそれを受け止めるのって相当精神的コストのかかることだと思うんですよね。
「キモい」とか「面倒くさい」とか一蹴することはとても簡単なんですけど、自分の中にもある大なり小なりの業の深さにも目をそむけることになってねーかなーと。
そしてそういう魂の丁寧なトレースをしてない生き方は果たして「真摯に丁寧に生きている」といえるのだろうかと疑問です。
個々の面倒くさいとこを丁寧に見つめて受け入れる先にサブカルや、もっと精錬すれば文学が生まれたりするんじゃないかなと思います。
おそらく姫乃さんは「自分がエロ本好きである」という癖と少なくない時間をかけて向き合ったと思うんですよね。「女性なのにエロ本好きなんて」みたいな世間一般と比較しての葛藤や苦しみもあったと思います。
それを乗り越えて「私はエロ本が好きです」と公言し、ファンの業を真摯に受け止め向かい合う姿は自己理解他者理解でなくてなんだろうな、と思います。
雑誌のインタラクティブ性、インターネットの一方通行性
先述したような内容のハガキがだんだんとなくなり、長文や雑誌にまつわる駄洒落、人には言えない深い欲望を打ち明けるなど、雑誌を盛り上げようという内容のハガキが増えてきたのです。
私 はその時初めて雑誌の読者は成長するということを実感しました。これは恐らく私が何度も原稿を書いているうちに成長したからでしょう。同時にエロ本の連載 も地下アイドルの活動も、同じだということに気づきました。私が成長すれば、ファンも成長します。そして信頼関係がうまれるということです。
インターネット黎明期は「一方通行の雑誌やテレビは終わった、これからは双方向性のあるインターネットの時代だ」みたいなことが言われてました。
しかしインターネットにも欲望を置いとくだけ、検索者が消費するだけの一方通行な面はあって、逆に姫乃さんも書かれているように雑誌にも雑誌を媒介としての文通的相互作用の面はあるんだよなあとしみじみ思う次第です。
それはネットだから雑誌だから関係ないことだったんだなあ。
ネットにはないタイムラグがあるからこそ醸成される要素もあったのかもしれないなあ。懐古主義かなあ。
蛇足ですが私も弟の影響でエロマンガはそれなりに嗜んでおりまして、単行本として買うのはワニマガジン社一択なので今回の記事は感慨深いです。