文章スケッチ「縁日」
文章スケッチの広場「縁日」に参加します。
虚無透氏企画の場、多謝でございます。
http://novelcluster.hatenablog.jp/entry/2015/08/20/000000novelcluster.hatenablog.jp
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「縁日」
車を草っぱらに停め、鳥居を目指してすこし歩く。
宵宮が開かれる今夜は鳥居はあしもとから照明をあてられ、月のない夜に乳白色の柱を浮きだたせている。
いつもは簡素な神社前の砂利道に、色とりどりののれんを下げた夜店のテントがならぶ。
わたあめ屋、チョコバナナ、クレープ、おもちゃ屋、くじびき屋、やきとり屋、ボールすくい。
くじびき屋の前には、ちょうど鶏を入れるのに似た背の低い金網小屋がある。小屋の天井には、大小のおもちゃがロープで雑多に吊るされている。PS3の箱、ニンテンドーDSの箱、プラスチックのモデルガン、人形、戦車。ロープは金網小屋の天井にひとつ開けられた穴から、いくつも外へと伸びている。
小屋の奥には老体の男がパイプ椅子に腰掛けている。老父の顔全体には深い皺が刻まれている。小屋に隠れて上半身しか見えないが、着ているグンゼのTシャツは夜目にもくたびれている。
小学校低学年ほどの男児が女の手をひいて、「これやりたい」と金網小屋を指出す。目はPS3の大きな箱から放さないまま。
女は、男児の母親だろう、奥の老父の手に硬貨を渡す。老父は受け取るとパイプ椅子から腰を浮かし、穴から垂れ下がるロープを指さし、男児に選ばせる。
男児がロープを1本引くと、するすると箱の中のロープのひとつが動きだす。吊るされていたモデルガンのひとつが、引っ張る速度にあわせて天井上に顔を出す。
くじびき屋の老父からモデルガンを手渡された男児は、手に届いたそれとPS3の箱とを交互に見ていた。
屋台から境内へと向かう階段には、地元の中学生ほどの年齢と思われる男女が何人か集まっている。
女子はとりどりの浴衣を着て、髪を上にまとめている。男子のほうはといえば、無地のTシャツにハーフパンツだった。喧騒のなか顔を近づけて話をしている。少し離れたところでその喧騒をつくっているのは、地区の男衆だった。やきとり屋台の後方でなにごとか話してはときおりわっと笑い声をあげている。小学生があたりを走り回っている。
神社の社殿へ続く小径には、提灯が揺れている。古びた提灯には、地元の企業や、閉店して今はもうない定食屋の名前が書かれてある。両脇の狛犬の面がゆらめく明かりに照らされている。
木段をきしきしと踏みしめながらの社殿の引き戸を引くと、若い神主が奥の控所から顔を出した。神主は甚平を着た自分の幼子を抱きかかえていた。
(985字)
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書き進めて縁日、宵宮(よみや)、神社建築の名称と意味の区別がついてきました。
普段歩いているところでもいざ書こうとすると名前がわからない。あれ、これ何回も言ってる気がする。
解像度を上げたい。