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ほぼねるまえに更新してます 読んだ本/聴いた音楽/マラソンみたいに続けていきたいふつうの日記

人狼JIN−ROHは饒舌に語る

10数年ぶりに観て気づいた。2巡してやっと1つの作品なんですな。

以下メタファーと映画のテーマになっている問い「伏はなぜ少女を撃たなかったか」についてちょこっとラブ、いやログ。
押井作品を安易に語ると死ぬっつーのは承知の上です。

[asin:B0018KKQBY:detail]


人狼 JIN-ROH
監督:沖浦啓之
原作・脚本:押井守
音楽:溝口肇

製作会社:バンダイビジュアル、ING
公開日: 2000年6月3日 (東京都)


あらすじ

舞台は第二次世界大戦から十数年後の日本。
警察とは別に東京に活動範囲を限定した「首都警」、なかでも武装勢力の鎮圧を主な任務とする特別機動隊(通称『特機隊』)がある世界。
その特機隊の一員として強化服(プロテクト・ギア)に身をつつんだ伏一貴(ふせ かずき)は、「赤ずきん」と呼ばれる民間テロ組織の少女を追い詰めるも撃つことができず、彼女に自爆を許してしまう。
謹慎中、自爆した少女の墓を訪れた伏の前に、彼女の姉を名乗る「雨宮圭(あまみや けい)」があらわれる。
伏一貴はなぜ少女を撃つことができなかったのか、伏と圭、そして特機隊の行く末とはーー。



以下ネタバレガンガンします。







テーマ

「人間と獣」
「体制VS反体制」
(「繁栄の影で忘れ去られていくもの」)

メタファー

・鴎と風船

→圭は河の上を気持ちよさそうに飛ぶ「鴎」を見つめるのに対して、伏はデパートの屋上で子どもの手を離れて空にのぼっていく風船をいつまでも見つめる。
伏にとって群れから離れて自由になることは自分の居場所を失うことである。また圭と伏の「自由」には帰る場所がないことを伏は理解している。

・伏の夢の中で圭が狼に喰われる

→情欲じゃないっすかあ
あと人間と獣はいっしょにはいられない、自分は狼側であるという認識、最終的な2人の関係を示唆している。
どうでもいいけど会田誠の「巨大フジ隊員VSキングギドラ」を思い出しました。エロス!

・解体される古い建物

→時代の波とともに不要とされ、失われていくもの
≒「セクト」、スケープゴートとされる特機隊
押井監督の大好きなノスタルジーですね。
「国民の不安と政府不信のスケープゴート」「首都警と自治警の一本化のための贄」としてお上から特機隊の解体命令が下る、という設定は神山版攻殻機動隊の公安9課のあつかいにも活用されているような。

伏と圭の公園でのやりとり

「みんなすぐ忘れちゃうのよ。ううん、初めから記憶なんてしてないのかもしれない」
「一日たって更地になっちゃえば、初めから無いのと同じ。人間だってそうかもしれない。なんだかさみしいと思わない?」

・まばたき?

圭と伏が橋の上で会話をするまで登場人物がまったくまばたきをしていない。なので冒頭の伏や自爆少女ちゃんなんかがなんとなくサイボーグ、非人間っぽく感じるんですが、これは特に意味をもたないのかもしれない。考察ブログ探しても他に言及している人も見つからないし、その後のシーンでは登場人物は(きわめて少ないけど)まばたきしているし。
でもスカートの揺れのリアルさにこだわった監督がまばたき指示しないかなあ?



あとは某掲示板ログであったとおり、
・月の満ち欠けが伏の心中の「獣ー人間」の揺れ動きを表す
これはそうなんだろうなと。


これは小ネタだけど、

・登場人物には全員モデルがあるらしい

室戸が石原裕次郎ってのはすぐわかった。
伏は若かりし日の高倉健


伏はなぜ少女を撃たなかったか

→伏が少女の幻影を追うシーンでたしか「聞きたいことがあるんだ」と言っていることから、当時の伏には少女の行動が理解できなかったのかなと。だから伏が聞きたかったことというのは「君はなぜ死ねるんだ」なのかな?
その少女の行動は生きて投降するよりも武装ゲリラ「赤ずきん」のメンバーとして自爆するということ。個として生きるよりも、群れのなかの一員、「獣」として死んだ。
「獣」側ではあるけれども特機隊としては「養成校上がりの新人」であった伏は武装ゲリラと相対して人を撃ったことがなかった。そう仮定すれば、「獣の掟」の意味が伏にはまだ真にはわかっていなかった、まだ「獣」ではなかったのでないか。
「君はなぜ死ねるのか」という伏の疑問は、実際に個のアイデンティティを捨て群れとして命を落とした人たちへの押井守の問いなのかもしれない*1
この問いと答えが正しいのかは何度も観ないと見えてこないし(そして観るたびに見方は変わるんだろうし)、その問いが押井監督自身のものであるかどうかは押井守という人をもっと理解しないといけないんだろうけど、なんか沼が途方もなく広くて深くて戻ってこれなさそうなのが怖いんでーす。

そういう理屈眼鏡で観なくても、映像が美しく音楽も渋くセリフは必要最小限の、「映像で語る」素敵な作品です。
実写トレス(ロトスコープとう手法があるんですね)じゃなくてほぼ全部セル手書きだというのに改めて震撼する。
ラストの伏のすばらしい表情も0から作られているとか本当に…。





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【ケルベロス】人狼【JIN-ROH】…押井守…

なんでわかるんだろうね…本当に…

*1:それを沖浦監督がすくいとった

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