「怪談短歌入門」から好きな短歌を7首
怪談が好きです。短歌が好きです。
「怪談短歌」は、もともとは女性向け怪談雑誌「Mei(冥)」の刊行イベントとしてtwitterで怪談にちなんだ短歌を募ったのが始まり。
東直子さん、佐藤弓生さん、石川美南さんを選者として過去2回開催されました。その中から選出し、書籍化したのがこの本「怪談短歌入門」。
この中で第1回、第2回で個人的に好きだったものを残しときます。注釈はわたしの感想。
第1回より
あやとりの指絡みあう 押入れに 誰にも言えぬ友だちはいて 堀 まり彗*1
クロールのフォームを直してくれし手は また水底へ消えてゆきたり 沼尻つた子*2
午前二時湾岸二号二百キロ フローレンス・ジョイナー型おばあちゃん 魚住蓮奈*3
第2回より
夜な夜なに眼鏡のアイツが誘い来る野球しようぜおまえボールな 無樂*4
鈴ほどの背丈になったわが母がかじった場所から腐ってゆきます 佐多 椋*5
真っ白なうどんかき分け叫びます中にあの子がいるはずなのよ 鮫漫坊*6
加速して回り続ける観覧車恋人たちはひとつに溶ける 姉野もね*7
第3回大賞作品も決まったとのことなので、単行本化楽しみにしてます。
(もし短歌の引用は著作権的にまずいぜー等あれば教えてください)
*1:「友だちはいて」と接続助詞で終わる形式を「言いさし」というそうです。含みをもたせて終わることで不穏な余韻をうまく残してるなーと思います。
*2:こういう「不穏でなにかわからないものなんだけどなんとなく暖かみがあるもの」すきです
*3:都市伝説で「時速200キロババア」みたいなのがあって、多分それをモチーフにしてるのではないかなと思います。上の句の「に」のテンポと下の句の「フローレンス・ジョイナー型おばあちゃん」の勢いが好き。
*4:日曜夕方の国民番組のあの子が血だらけ蒼白でバット片手に来るさまを想像しました
*5:書籍中にも書かれていますが、「母」をモチーフとした歌はいくつかあったようです。その中でもこの歌の「小さくなった母」の理想と、「齧った先から腐ってゆく」の、やはり母たる侵食性とか、すごい怖いって思いました。
*6:これはその情景の少しのおかしみと、探してる当事者の心の危急性みたいなののズレがすごい良いし、怖い。
*7:これ「怪談短歌」ってくくりを知らせずに誰かに提示したら、フツーにロマンチックな歌としてさらっと読み過ぎられそうな歌ですよね。しかし「怪談」というくくりの中で改めてみることで、「加速」して「回りす続ける」、「ひとつに溶ける」恋人たちという「なんか不穏じゃね・・?」感がジワジワきます。言葉って不思議だーと思った一歌でした。